映画研究部NOAH

【コラム】映画研究部 NOAH 第29回 「Hedwig and the Angry Inch」

出会い、夢、代償、アメリカ

「ヘドウィグ アンド アングリーインチ」

1997 年からオフブロードウェイで上演されロングランを記録した後にはキャストを変え、アメリカ各地 やイギリス、カナダ、ドイツでも上演されたミュージカルを元に作成された映画である。

当時、マドンナが劇中歌 2 曲の権利使用の申し出や、デビッド・ボウイはグラミー賞授賞式をすっぽかしてまで観劇するなど上演後にも人気に火をつける。

日本でも上演され 2004 年、2005 年、には三上博史、2007 年、2008 年、2009 年には山本耕史、2012 年には森山未來と大根仁の W キャスト、2019年には浦井健治が主演でイツァーク役は女王蜂のアヴちゃんが抜擢された事でも話題になった。

・ストーリー

旧東ドイツ生まれの少年ハンセルは、聴いていた米国ラジオで自由の国アメリカのロックミュージックに触れ衝撃が走り、次第に夢はアメリカでロックスターになる事となった。

同時期に彼は母親からプランクトンの魅惑的な「愛の起源」の物語を聞かされ、それ以来、彼は自分の “カタワレ”を見つけようとする。

数年後のある日、偶然アメリカ軍の軍曹ルーサーと出会い、少年ハンセルの美しさに見初められ、ハンセルにはパパができた。そして 2 人は愛しあう。

「何かを得るには、何かを置いて行かなければならない。」

ルーサーと婚約し、自由を求め渡米するため、性転換手術をし母のパスポートを偽装して母の名「ヘドウィグ」を名乗る決意するが、手術は失敗。

彼、もとい彼女の股間には 1 インチの隆起が残った。(アングリーインチ)

幸せを掴んだと思った束の間、離婚。その日、あれだけ苦労して越えたベルリンの壁が崩壊する。

音楽活動を始め、独り食いつなぎ、ベビーシッターのバイト先の息子トミーのロックへの情熱を知っ たヘドウィグは、彼女のロック全てをトミーに注ぎ込み音楽活動を共にする。

次第に相思相愛の関係となっていくのだが、ヘドウィグの体の秘密を知ったトミーは逃げてしまう。

数年後、ヘドウィグのオリジナル曲を自身作と偽り全米デビューを果たし、ロックのアイコン的存在と なったトミーは全米ツアーを敢行。
ヘドウィグは復讐のため自身のグラムロックバンド「THE ANGRY INCH」を率いてストーカーの様にくっついてツアーを行っていく。復讐作戦も功を奏し、 ヘドウィグはメディアに取りだたされ、一躍時の人となりロックスターの夢が現実となろうという時、ベルリンの壁の様に彼女の中で何かが崩壊していく。

自分のカタワレとは何か。愛の起源とは何なのか。

・監督、脚本、主演ジョン・キャメロン・ミッチェル

舞台、映画も共に監督、脚本、主演、原作を務めたのはジョン・キャメロン・ミッチェルだ。 舞台ではヘドウィグとトミーの 2 役も演じていたそう。

自身がゲイであることを公に活動しており、ジェンダーレスなキャラクター感のあるイギーポップや デヴィッド ボウイなどのグラムロック、パンクではラモーンズやセックスピストルズから大きな影響を受けたことが、ヘドウィグのキャラクター像にも大きく影響している。

LGBT のカリスマ的存在でヘドウィグの映画化でカルト的人気を博し、今もなお若者達から支持を受けている。

・感想

ミュージカル映画ということもあり、音楽シーンが満載だ。

私も実際ミュージカル映画というジャンルにあまり触れてきたという訳ではないが、日本だと THE YELLOW MONKEY、すかんち、毛皮のマリーズなどの「グラムロック」と呼ばれる音楽が好きな方や、2018 年に話題になった「ボヘミアン・ラプソディ」 を見て感動した方は気に入ると思う(あれ程 大規模で、美化されている作品ではないが…)。

はみだし者、マイノリティー、パンキッシュ、バイセクシャル。
こんな要素がこの作品には詰まりに 詰まっており、更にはヘドウィグのアップダウンの激しい壮絶な人生と劇中のグラムロックがドロドロと絡み合う。

トランスジェンダーで喜怒哀楽の激しいヘドウィグというキャラクターをグラムロックサウンドが充分に引き出していく。

更には多くのミュージカル映画では撮影段階では口パクでの演技が常識なのだが、本作ではバンド 隊は音声に合わせた当て振りなものの、ヘッドウィグ演じるジョン・キャメロン・ミッチェルはシーン度に生歌で収録している事が演奏シーンをよりリアルにしているのかもしれない。

それ故、ヘドウィグの心理状況がヒシヒシと伝わり胸がギューっと締め付けられる。

映画としても、カメラ目線を禁止にしたり、同性愛や虐待などを題材にするなど、現在でもタブー視されるが、それまた常識に囚われない。

この映画のテーマは「愛」の他には「壁」だと思う。性の壁、ベルリンの壁、心の壁、常識の壁、 etc…

中学生の頃、初めてロックに触れた時に感じた壁をブチ破る様な得体の知れない衝動を見る度に感じ られる。

冒頭シーンの 1 曲目「Tear Me Down」を聞いてビビビッときた方はきっと最後まで楽しめる作品に なる事でしょう。

 

・作品データ

原題:Hedwig and the Angry Inch
公開:2001年
上映時間:95分

監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
製作:クリスティン・ヴェイコン、ケイティ・ルーメル、パメラ・コフラー
原案:ジョン・キャメロン・ミッチェル、スティーヴン・トラスク
脚本:ジョン・キャメロン・ミッチェル
撮影:フランク・G・デマルコ
音楽:スティーヴン・トラスク
出演:ジョン・キャメロン・ミッチェル、スティーヴン・トラスク・マイケル・ピット、etc…

画像引用
https://www.sacurrent.com/ArtSlut/archives/2019/06/18/video-dungeon-theatre-hosting-special-screening-of-hedwig-and-the-angry-inch
https://www.framerated.co.uk/hedwig-angry-inch-2001/
https://www.justwatch.com/jp/映画/hedwig-and-the-angry-inch
https://www.rottentomatoes.com/m/hedwig_and_the_angry_inch/pictures/

キーワード検索から記事を検索

タグで記事検索