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音楽コラム集|編集部コラム

漫才マイクの大定番 「サンパチ」って何?

2020.05.14

音楽とお笑い、一見あまり関係のないもののように感じられるが、果たしてそうだろうか?
前回はお笑い芸人のテーマソング「出囃子(でばやし)」についての紹介があった。


http://book.studionoah.jp/2020/05/laughandmusic1/


ちなみに著者は2008年のM-1グランプリで優勝したNON STYLEが好きである。惜しくも2年連続優勝は逃したが、敗者復活戦から決勝まで這い上がった2009年はテレビの前で祈るようにしていて観ていた記憶がある。
彼らの出囃子はKERUMIの『Prayer』。スカパンクバンドらしいイントロからテンションの上がる定番曲だ。 お笑い芸人の数ほどある出囃子。好きなお笑い芸人から新たなジャンルの音楽を開拓するのもありかもしれない。




漫才マイクの大定番 「サンパチ」って何?





それでは今回の本題に入ろう。
漫才師はステージ中央に置かれたセンターマイクを基準にツッコミとボケが並ぶ。どちらかが極端に離れてしまっては客席からの見栄えも良くないためこのセンターマイクは「バミリ」の役割も果たしているのだ。

そのセンターマイクの中でも大定番である通称「サンパチ」と呼ばれるマイクをご存知だろうか?今回は有名楽器通販サイトでも「漫才マイク」として紹介されるほどの知名度と実力を兼ね備えた「サンパチ」の魅力に迫る。


サンパチの通称で親しまれているSONYから1970年に発売されたコンデンサーマイク「C-38B」。
放送局には必ずと言って良いほど導入されているんだとか。

では何故、ここまでサンパチが漫才マイクとして定番化したのだろうか。その機能面と歴史に着目していきたい。




ロングセラーまでの道のり


1965年
原型と言われる「CU-2A」が第16回NHK紅白歌合戦にて使用される。

1969年
旧型の販売がスタート テレビ映りなどを考慮して塗装を薄めのグレーに、マイク上部のパンチメタルから網目仕様に変更をし、旧型の「C-38A」が販売された。


1970年
ファンタム電源機能を搭載した「C-38B」の販売スタート。
1970年に発売から50年の歴史を持つサンパチ。2015年にはグッドデザイン賞を受賞。販売当時から変わらないデザインで、マイクケーブルは本体に直結され、セッティングもスムーズだ。
また集音性にも優れていて、多少の身振り手振りがあってもしっかりと音を捉えてくれる。
もちろん、コントやバラエティ番組で使用されているピンマイクでも十分なのだが、舞台裏での装着の手間を省けるという利点があり、代わる代わる漫才師が舞台に立つ際に非常に役立つのだ。 それだけでなはくこのサンパチはレコーディングにも活躍する。

通常コンデンサーマイクにはファンタム電源という外部からの電源供給が必要になるが、サンパチは乾電池での稼働も可能。つまりはファンタム機能のついていないハンディレコーダーなどでも対応することが出来るのだ。コンデンサーマイクのセッティングの基本は、撮りたい音の中心にマイクが来るようにするが、サンパチは本体の機能上、先ほども記述したように広範囲でのレコーディングに対応できる。


しかも単一指向、無指向に切り替えられるだけではなく、大きな音量も歪むことなくクリアに録音できることがポイントだ。

余談だが、漫才で使用されるセンターマイクは、漫才師が2人並んで身長の小さい方の顎の高さにマイクのてっぺんが来るように設置されるんだとか。これはセンターに置かれているカメラから別角度のアングルへ切り替わってもマイクが漫才師の顔を隠さないための工夫である。漫才師の表情に被らないようにするのもお笑いを作る上でのコツなのだ。


いかがだっただろうか?

近年では漫才師1人1人にピンマイクを付けてサンパチを置くだけといった場面もあるようだが、どちらにしてみても漫才師の象徴であることには変わりない。今回はセンターマイクに注目したが、お笑い芸人の使用している楽器や機材に目を向けても面白いかもしれない。