音楽コラム集

【コラム】映画研究部NOAH 『ジーザス・クライスト=スーパースター』(1973年)

【コラム】映画研究部NOAH 『ジーザス・クライスト=スーパースター』(1973年)

挑発的な視点でイエスの受難を描くロック・オペラ。稀代の作家コンビのデビュー作。

 

作詞家ティム・ライスと、作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバー。このコンビによるミュージカル作品は「オペラ座の怪人」など人気作が多く、世界各国でロングランを記録し、映画になった作品も多い。そして、初の映画化にしてヒット作となったのがロック・オペラ「ジーザス・クライスト=スーパースター」(以下、「JCS」)だ。

 

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「JCS」は成立までに時間がかかった作品だった。ライスは1960年代にロンドンで作詞家として活躍していて、演劇好きなこともあってミュージカル作品を作りたいと考えていた。そこで紹介されたのがウェバーだった。2人ともまだ20代前半の若者だった。いくつかの習作で自信をつけた2人は本格的な作品づくりに入る。ライスは、新約聖書に登場するイスカリオテのユダを主人公に、彼の視点からイエスの受難を描くというアイデアを温めていた。歴史上ではユダはイエスを裏切った人物で、キリスト教圏では裏切り者の代名詞でもある。若者らしい挑発的な試みになりそうだった。1969年5月。イギリスのバンド、ザ・フーがアルバム「トミー」をリリース。ロック・アルバムでありながらひとつの物語になっており、歌詞は全て登場人物のセリフ。芝居によるセリフが一切なく、楽曲だけで進行するため、世界初の「ロック・オペラ」として大きな反響を呼ぶ。ライスとウェバーは、この作品から大きな刺激を受け、1969年11月にリリースしたシングル盤「スーパースター」はオーケストラとロックが融合したロック・オペラ形式になっていた。ソウルフルな歌声を持つマレイ・ヘッドをボーカルに迎え、イエスに「スーパースター」と呼び、「あなたは何者なのか?」と問いかける曲だった。この時点では全体がまだ完成しておらず、反響をみるための先行リリースだった。翌月、アメリカでもリリースされ1970年1月にはビルボード100位圏内に入る中ヒットを記録した。この評判で勢いにのり、マレイ・ヘッド、ディープ・パープルのボーカル、イアン・ギラン、新人でのちにエリック・クラプトンのバンドに加入するイヴォンヌ・エリマンなどを召集する。完成したアルバムはイエスの最後の7日間を描いた受難劇で、LP2枚組みの大作。9月にリリースされた。イエスを悩める人間として描写したことが冒涜的とされ、ラジオでは放送を禁じられた。しかし、売れ行きは好調。71年にビルボードのアルバムチャートで1位を記録し、同年、ブロードウェイで公式舞台版が上演され、こちらも好評を得た。

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映画監督ノーマン・ジュイソンは、「屋根の上のバイオリン弾き」を撮影中、出演者のバリー・デネンからリリース間もないLP版「JCS」を勧められた。バリーはLP版でピラト提督を演じていた。かつてテレビ局で音楽番組の制作などに携わっていたジュイソンは、アルバムを聴いてこれは自分にしか映像化できない作品だと確信し、映画化を決める。舞台版ではなくLP版に基づいた映像化を想定したため、イアン・ギランにオファーが出された。しかし、イアンはディープ・パープル優先のため辞退。結果、イエス役にはブロードウェイ版の代役だったテッド・ニーリーが選ばれた。ユダ役には同じく代役経験のカール・アンダーソン、マリア役にはイヴォンヌが再登板した。ライスに脚本が依頼されたが、内容を補う曲の追加と、一部の歌詞の表現の変更のみにとどまったという。音楽は再びレコーディングしなおされ、オーケストラはアンドレ・プレビンが指揮した。舞台版をなぞりたくなかったジュイソンは、「聖書に描かれる風景のなかで現代の若者が「JCS」を演じる」アイデアを採用。全編イスラエル・ロケで、スタジオでの撮影は一切なしとなった。荒野と遺跡を舞台に、役者、歌手、ダンサーが全力で演じきる。気温が常に50度近くまで上がるため、まさに命がけだったという。実際に聖書に登場する場所で撮影したシーンもあった。あらかじめ録音した音に合わせて撮影するため、再生用の巨大なスピーカーを断崖の上に運んだりもした。過酷な撮影に報いるように、73年に公開されるなり、映画は大ヒット。批評家の意見が厳しいといわれるゴールデングローブ賞を受賞した。映画版「JCS」が一番の「JCS」と言い切るファンも多い。そして、この映画が世界中でヒットしたことで、ティム・ライスとアンドリュー・ロイド・ウェバーのその後の成功が約束されたのだ。映画版のキャストはその後も「JCS」に関わり続け、現在でもリバイバル公演やライブ・コンサートでゲスト出演している。ただ、ソウルフルな熱演を見せたカール・アンダーソンは、2004年に白血病のため惜しくも亡くなった。

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「ジーザス・クライスト=スーパースター」
1973年/ユニバーサル映画
監督:ノーマン・ジュイソン 原作:ティム・ライス&アンドリュー・ロイド・ウェバー
出演:テッド・ニーリー カール・アンダーソン イヴォンヌ・エリマン

 

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