音楽コラム集

【コラム】テレビ音響効果の世界「サウンドロゴ 後編」

 前回はTBSのサウンドロゴについて話しましたが、今回も引き続いてのお話です。
 サウンドロゴは、CMなどの終わりに3秒から5秒くらいの時間で企業イメージをサウンドで表現したものです。ときに「It’s a Sony」といった言葉で表現したものがあったり、とくに決まりがあるわけではありません。ただ、その短い時間の中で、キャッチーな印象に残るサウンドを表現しなくてはなりませんから意外と難しいのです。
 今回はTBSのクリスマス編、Boonaのサウンドロゴを担当しましたのでそのお話を。クリスマスバージョンは2つ、プレゼント編とツリー編です(Sound Design Cubicのホームページにアップしてありますので、あわせて見ていただくとわかりやすいと思います)。どちらも、時間は5秒。その最後1秒にTBSのロゴが入るので、実質4秒です!
 プレゼント編は、まずBoonaがプレゼントの箱を開けようとしています。効果音としては、1.箱を振る音 2.箱のフタを引っ張る音 3.フタが開いたときの音、の3つです。
 1.箱を振る音は、乾いた音にしました。実際に200×200の紙箱に消しゴムを新聞紙で包んだものを入れて振っています。さらにシェーカーの音を加えています。こういう音は、内容物をイメージするものですから、いろんなパターンが考えられますよね。石を入れたり、木片を入れたり、野菜を入れたり、それぞれで随分と音色は変わります。今回はBoonaが振っていることもあり、「カワイイ」感じにしてみました。
 2.箱を引っ張る音は、イメージとしてはゴムが引っ張られる音なのですが、実際にゴムを引っ張っても音は出ません。今回は、革のベルトをねじる音を録音し、ピッチを少し下げ、ストレッチして音を伸ばし、EQで500Hzから下はカットしました。革素材は意外と便利で、たとえばロープが引っ張られる感じや首を絞める音(!)にも使えます。
 3.フタを開ける音は、その前にひっぱり系の音を付けていますから、その結果として弾けるニュアンスですね。「パッ」といったイメージです。これは、よくレストランなどで出てくるビニール袋に入ったナプキンを手でたたいた音です。それに、たまたま家にあった胡椒のビンのキャップを外す音を加えてみました。その後、イコライザーをかけて調整しています。こういった擬声語のイメージが先行してしまう効果音は、一つの音で表現するよりも、いくつかの音を足すことによって、そのニュアンスに近づけるほうが上手くいきます。
 シーンの流れからすると、箱を開けた音の後に「Merry Christmas!」と行きたいところですが、そこは4秒の世界です。開けると同時にMerry Christmasの声を付けたので、イマイチ「パッ」の音が立ちませんでした。これはしょうがありません。では、付けなくてもいいんじゃない? という声も聞こえてきそうですが、絶対にフタの開く音もあったほうがいいんです。そういうディテールの積み重ねが、音の表現の立体感を作っていくんですね。ちなみに、「Merry Christmas!」の声は娘に発声してもらいました。本当は2〜3才の女の子のイメージだったのですが、見つからなかったので、可愛いキャラで発声してもらい、あとはピッチを上げて使っています。

中島 克(なかじま まさる)
有限会社サウンド・デザイン・キュービック代表取締役。1985年、東京サウンドプロダクションを退社後、キュービックを設立。TSP在籍時には、テレビ朝日「川口探険隊」の選曲を担当。独立後は、「警視庁24時」「驚きももの木20世紀」「星新一のショートショート」などの番組も担当した。現在は、「美の巨人たち」「THE追跡」「Song to Soul」など楽曲制作も含め幅広く活動している。
[サウンド・デザイン・キュービック ]http://www.cubic-power.net