音楽コラム集

【コラム】テレビ音響効果の世界 音楽編集のテクニック

 今回は、音楽編集のテクニックについてお話ししたいと思います。
 テレビ番組を見ていると、映像に合わせて音楽が編集されているのをよく耳にします。知っている曲を口ずさみながら見ていると、アレ? と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。現在はコンピュータを使っているので、編集を失敗しても簡単にアンドゥ(注:操作を取り消し元に戻すこと)できますが、6mmテープを使っていたころは、ハサミを使って実際にテープを切っていたので、失敗は許されませんでした。
 音楽を編集する目的は、いくつかあります。�@シーンのケツに合わせる�A映像の展開に合わせる�B綺麗にフェードするための編集�C決められた尺の中で曲の美味しいフレーズを入れるため�Dナレーションやセリフとのかけひき、等が考えられます。
 テレビは、画と同録(注:同時録音された音声)があり、そこにナレーションやセリフが乗っかってくるので、そのままでは全体がただ流れるだけになってしまいます。そこにブレーキをかけたり、弾みをつけたり、盛り上がりを演出するために、音楽の持っているドラマチックな部分やリズムの変化などを利用するわけです。
 ポイントは楽曲を試聴するときに、常に編集することを考えながら聞くことです。このブレイクはうまく使うと効果的だとか、盛り上がり部分が編集して伸ばせるとか、間奏部分のリズムは尺調整しやすい、あるいはイントロやコーダ(注:終結部分)に挟み込める、とかです。また楽曲が転調しているかどうかも重要なポイントで、ワンコーラスでケツ合わせにしようと思ったら、転調していてコーダが使えなかった、なんてことはよくあることです。
 よく使われる手法として、イントロを先行させておいて、歌頭やメロ頭をシーンに合わせる演出があります。イントロが4小節しかなくて尺が足りない場合は8小節に伸ばして、繰り返し感が出てしまう場合はフェードインにしたりします。この際、間奏やコーダの部分に、イントロで使える部分があるとあらかじめわかっていると、間奏やコーダをイントロに流用できるので自然にイントロを伸ばすことができます。
 また、この手法の流用として、ナレーションベースに間奏部分をはわせ、ナレーション終わりで歌のフレーズを持って来たり、シーンのメリハリを付けたいところに、音楽の盛り上がる部分をぶつけたりする演出があります。
 楽曲の終わりを、あえてフェードアウトしたい場合にも編集することがあります。フェードアウトのタイミングで2コーラス目がきてしまったりする場合がこのケースで、綺麗なフェードアウトが作りにくいのです。こんなことで視聴者に違和感を与えてはいけません。またフェードアウトのおしりに少しリバーブを乗っける、なんてこともたまに使う手法です。フェードインやフェードアウトを綺麗に行うには、ストリングス系の方がうまく行きます。リバーブを上手く使えば、フェードアウトの曲をコーダが付いたケツ合わせの曲にすることも可能です。
 いろいろ手を尽くしてもうまくいかない場合は、切り替えて別の曲を考えます。無理な編集をして音楽を台無しにしては、元も子もありません。作られた音楽を尊重するスタンスは忘れてはいけないのです。一連の編集作業を手こずると、大きなタイムロスにつながります。仕込みのスピードが問われるのはテレビの世界では当たり前ですが、それ以上に音で演出できるあらゆる可能性を探るのが音効の仕事なのです。

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中島 克(なかじま まさる)
有限会社サウンド・デザイン・キュービック代表取締役。1985年、東京サウンドプロダクションを退社後、キュービックを設立。TSP在籍時には、テレビ朝日「川口探険隊」の選曲を担当。独立後は、「警視庁24時」「驚きももの木20世紀」「星新一のショートショート」などの番組も担当した。現在は、「美の巨人たち」「THE追跡」「Song to Soul」など楽曲制作も含め幅広く活動している。
[サウンド・デザイン・キュービック ]http://www.cubic-power.net