激音通信

【激音通信】vol.9「トニー・アイオミとSGの【黒い】関係」

『パラノイド』!『ウォー・ピッグス』!『アイアンマン』!『血まみれの安息日』!ブラック・サバスのリフを轟かせていたのはこれだ! トニー・アイオミとSGの【黒い】関係!

1991年、ニルヴァーナのアルバム「ネヴァーマインド」がグランジの時代の到来を告げた。それまで地道にインディースで活動し続けていた、ニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンド・ガーデン、マッド・ハニーといったバンドが、次々とメジャー配給で世界に発信された。おかげで生ぬるいポップスや、セレブリティ気取りのビッグ・ネームたちは一気に若者たちから中指を立てられるようになった。そんななか、グランジのバンド勢が口をそろえてリスペクトを公言したのが、オジー・オズボーンが在籍していたオリジナル・メンバーのブラック・サバスだった。同じ頃に、ドゥーム、ストーナー・ロックと呼ばれるバンドもいくつか出現するが、こちらはグランジ以上に露骨に初期サバスからの影響を受けていて、グネグネしたリフを、執拗に、粘っこく、煙たくしたロックを展開している。初期サバスの何が、ファンの心を掴むのだろう?ギタリスト的な観点でいえば、間違いなく、あの独特なヘヴィネスを誇るリフの数々だろう。そのリフを生み出すのが、唯一、デビューから43年、一度も脱退せずにサバスを守り続けたギタリストのトニー・アイオミと彼の愛用するギター、SGだ。板金工場で働いていた頃にプレス機に指をはさんでしまい、左利きにも関わらず、右手中指と薬指、2本の指の先端を失い弦を押さえられなくなるという災難に見舞われた。だがしかし、指先にプラスチックのチップをはめることで克服。本来はハンディキャップをカバーするために取り入れたパワーコードとダウン・チューニングが、唯一無比のサウンドを生み出す結果となった。今回は、彼の発想を次々と音にしていったSGを取り上げよう。

【黒い安息日】
アイオミの最も古い記録映像は、1968年収録のローリング・ストーンズが開催したスタジオライブ、「ロックンロール・サーカス」。アイオミはここでジェスロ・タルのメンバーとして出演し、レコードの音に合わせて弾いているフリをしている。テンガロンハットをかぶってうつむき加減に立ち、ほとんど顔は映らない。そして手にしているギターは、フェンダーの白いストラトキャスターだ。もともとサンバーストだったものを自らスプレーで塗り替えた。ジェスロ・タルとしての活動はこの出演のみで、実質2週間程度だったという。 当時のアイオミは、地元バーミンガムのブルース・ロック・バンド、アースで活動していた。メンバーは、Voにオジー、Bにギーザー・バトラー、Dsにビル・ワード。のちのブラック・サバスだ。彼らはリハーサル中、窓から見える映画館に並ぶ観客たちを見た。映画館ではホラー映画が上映されていた。そこで、「人を怖がらせる音楽をやれば注目が集まるのでは?」というアイデアが浮かぶ。
そこで、ギーザーとオジーがオカルト趣味丸出しの歌詞を書き、アイオミは3つの音を使った不穏なリフを考えた。その曲は「ブラック・サバス(邦題:黒い安息日)」となった。オジーによると、初めてこの曲を披露したとき、観客たちはドン引きしていたが、続けざまに3コードのロックンロールを演奏したため、面食らった顔でステージを見ていたという。同じ頃に、アースという同名バンドがいるという理由でバンド名もブラック・サバスとなる。それがいい方向に転び、評判になった彼らはメジャーレーベルと契約した。しかし、ケチくさい予算の都合で、1stアルバムのレコーディングは2日しかスタジオを借りられなかった。そんなカツカツの状況のなか、アイオミ愛用の白いストラトが故障してしまった。いまと違って、気軽にピックアップを買ってきて交換できる時代でもなかった。そして何より時間がない! そこで持ち出したのが、彼がサブで用意していた1965年製の赤いギブソンSGスペシャル。このSGを使ってレコーディングを続行した。

【アイオミといえばSG】
SGについて簡単に解説しよう。ギブソンの代表機種として誰もが認めるであろうモデルは、SGではなく1952年に登場したギブソン初のソリッド・ギター、レス・ポール・モデルだろう。しかし、レス・ポール・モデルはフェンダーのテレキャスターやストラトキャスターなどのソリッド・ギターと比べると、高級志向で高価だった。そのため、派手好きの黒人ブルースマンにはよく売れたが、なかなか売上が伸びず、1960年に生産中止となっている。そこで1961年に登場したのがSGだ。鋭角的な2つのホーンを持つダブル・カッタウェイという攻めたルックス。当初はレス・ポール・モデルの軽量化、低価格化モデルチェンジという触れ込みで、商品名も「レス・ポール・スタンダード」だった。だが当のレス自身はこの仕様変更に納得がいかず、レスの離婚にからむ権利の問題もあって1962年に「レス・ポール」という名称がギブソンのラインナップから消える。以降、新レス・ポール・モデルはソリッド・ギターの略、「SG」と統一されることになる。SGスタンダード、SGカスタム、SGジュニア、SGスペシャルと商品展開をしていき、1960年代のギブソンを代表する機種となった。1960年代のロック・ミュージシャンの映像や写真を確認すると、セミアコ以外に持っているギブソンといえばSGだったのはこのためだ。だが、1960年代後半、イギリスのブルース・ロック人気がきっかけとなり、レス・ポール・モデルの再生産が始まると、SGは二軍落ち。1970年代前半には、ほとんどのミュージシャンがレス・ポールに乗りかえていった。だが、アイオミは頑なにSGを使用し続けた。

【強烈なリフを生み出したSGども】
話を戻そう。偶然の事故から持ちかえたギブソンSGスペシャルだったが、少し手が加わっている。当時のSGスペシャルのピックアップは、ハムバッカーではなくP90という黒い石鹸のような見た目のシングルコイルを採用している。アイオミのSGには、フロントピックアップにギター製作者ジョン・バーチが作ったシングルコイルのカスタム・ピックアップを搭載。ステンレス・カバーがかぶせてあるので、パッと見はグレッチのピックアップのように見える。ブリッジ側のピックアップはギブソンの純正P90だが、見た目のバランスをとり、こちらもステンレス・カバーで覆われている。通常、ネックとボディの付け根の裏あたりにあるストラップピンが、ストラトキャスターと同じようにダブル・カッタウェイの右側の先に移動されている。通常のストラップピン位置だと、ヘッドの重みでネック側が下がってくることへの対処と思われる。また、指板は通常のローズウッドにラッカー加工がしてあってツルツルになっている。指板上の弦のすべりを良くして指先のハンディキャップの負担軽減を狙ったらしい。そしてアイオミのギターの特徴である「0フレット」がナットの横に追加されている。トーン、ボリュームツマミのあたりにバイオリンを持ったサルのステッカーが貼ってあるため「モンキーSG」と呼ばれている。実際にアルバムを聴くとシングルコイルのコロコロパキパキした音と、ファズとレイニーアンプの歪みがブレンドされたP90の強烈な音色が聴ける。ギターの特徴がそのまま音に出ているといえる。名演奏を多々残している名器といえるが、トニー自身に言わせると、シングルコイルが派手に干渉を拾ってしまいノイズが多かったので使いづらかった、とのことだ。そうは言いつつも、映像で確認すると1975年ごろまで使用している。サバスマニアに言わせると、6thアルバム「サボタージュ」までは確実に使用しているそうだ。
一方で、1970年に西ドイツのテレビ番組「ミュージック・ラーデン」に出演。ここでは、純正ピックアップが3つ搭載されたトレモロアーム付きの白いギブソンSGカスタムを使用している。「パラノイド」レコーディング中にこれを抱えて話しこんでいる写真が残っているので、1970年前後にサブに使用していたようだ。
続いて、1976年頃から映像や写真に残っているのがジョン・バーチ製作の黒いSG。指板の十字架模様のインレイが印象深く、以降製作されるアイオミのギターすべてに踏襲される。アイオミは、メインとサブ合わせても何本も使いまわすタイプではないようで、アルバム「テクニカル・エクスタシー」、「ネバー・セイ・ダイ!」のレコーディングと、リリースに伴うツアーはこのギターを使用していると思われる。なぜ、ギブソンではなくてジョン・バーチなんだろうと筆者は昔から思っていたのだが、通常、SGは22フレットまであるが、アイオミはギブソンに24フレットまであるSGを発注したそうだ。おそらくダウン・チューニングで1音半下げたりする都合上と察せられるが、なんとギブソンはこの依頼を断ったのだという。「じゃぁ、もう頼まないよ!」とヘソを曲げたかどうかは知らないが、ジョン・バーチに製作依頼が来たというわけだ。
1979年に正式にオジーがサバスを脱退。新しくレインボーからロニー・ジェイムズ・ディオを迎え、アルバム「ヘヴン&ヘル」を制作する。このダビング作業時に手に取り、すっかり気に入ったのが、ジョン・ディギンズ制作のSG。愛称「オールド・ボーイ」だ。ディギンズはジョン・バーチの弟子のような人物で、ギター自体は1975年に製作してアイオミに謹呈されていた。ピックアップはフロント側にジョン・バーチのピックアップ、ブリッジ側はオリジナルのピックアップ。正面の5つのつまみはトーン×2、ボリューム×2、ブースター×1だそうだが、ブリッジ側のトーンは切断してあり、ブースターも取り除かれているので現在機能しているツマミは3つだそうだ。謎のアウトプットジャックが設置されているが、これはレコーディング用に作られたローインピーダンス・アウトプット。しかし、現在はこれも切断されている。ディギンズの設計意図は無視されているようだが、ライヴ、レコーディングで使い倒すうちに不必要な要素が取り除かれていったのだろう。加えて印象的なのが、まるで地獄からやってきたような塗装の仕上がりだ。これはディギンズが仕上げを急いだうえに、猛暑の日に機材車にギターを放置して塗装が溶けたせいだ。「オールド・ボーイ」は今年5月にオズフェストで来日した際も使用。バリバリ現役のメイン・ギターである。ちなみにディギンズの立ち上げたJaydee Custom Guitarsでは、このアイオミ仕様のSGを受注生産している。塗装は1975年に製作した当初の姿。イギリスからの送料込でだいたい35万円くらいで買えるようだ。公式HPには注文の際は支払いの3分の1の料金を手付金として先払いし、到着まで最低16カ月待つようにと記載されている。さすが職人が作る工房だけはある。
ところで、SGの本家ギブソンからは、90年代にトニー・アイオミ・モデルのSGがリリースされており、近年もエピフォンからアイオミSGが出ている。70年代に断っておいて、商魂たくましいとしか言いようがないが、これで手打ちということか。アイオミといえばジョン・バーチのピックアップのような気もするが、どちらもアイオミ公認のギブソン製のピックアップ。トニーは現在、トレモロアームを装着した白いギブソンをサブで使用しているが、写真で見る限りは、そのピックアップを搭載しているようだ。

【長生きしてくれ! アイオミ師父】
グランジ勢からの再評価もあり、1990年代以降も新たなファンを獲得し続けるブラック・サバス。80年代半ばに空白期があったとはいえ、オリジナル・メンバーが一人もいなくても、ディオにバンドを乗っ取られそうになっても、アイオミは一人で看板を守ってきた。一度も解散していないので、「オジーがいた頃が好き」とばかり言われるのはアイオミにとっては痛痒いかもしれない。90年代だって、キャラは薄いがボーカルにはトニー・マーティンが在籍していて、キャリア的に見ても「エターナル・アイドル」など意欲的なアルバムを出していた頃だ。しかし、時代の要請もあったのだろう。1996年、アイオミは再び、オジーと手を組み、オリジナル・サバスが復活した。以降、定期的にオジーのフェス、オズフェストへのヘッドライナー出演を重ねた。オジーがソロ活動に入ると、2007年にディオ期サバスを再結成し、「ヘヴン・アンド・ヘル」名義で活動。来日してラウドパークなどに出演。近年はアイオミが癌治療のため療養していたが、2012年、ビル・ワードを除くメンツで再び集結。2013年に新録アルバム「13」のリリース、日本版オズフェストでの来日とそれに続く北米南米ツアーと、まさに今精力的に活動している。 もはや彼らをリスペクトしていたグランジが登場して20年が経ち、解散したグランジバンドの再結成も行われる時代になった。先日の日本版オズフェストではトゥールのあと、ヘッドライナーとしての登場だった。トゥールのアクトがあまりにも強烈だったため、若干「サバスは大丈夫なのか?」という空気が瞬時、流れた。しかし、オジーの声が響き、アイオミが「ウォー・ピッグス」のリフを轟かせた瞬間、その心配は杞憂に終わった。観客がギターリフに合わせて叫び声を上げていた。もはや次元が違うのだ。まだまだフォロワーたちに貫禄を見せつけ続けるサバス。その存在感は、オリジネイターとしての風格に溢れている。(了)

(サウンドスタジオ赤坂店/NOAHBOOK 高橋真吾)

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このコラムは、激ロック内で掲載されているサウンドスタジオノアのコラム「激音通信」です。
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