音楽コラム集

【コラム】ゆる〜いヒットの作り方 #20 ゴーストライターと佐村河内守氏の珍事件

 世の中が大騒ぎになった佐村河内守氏とゴーストライターが巻き起こした前代未聞の大珍事。今年のベスト3に入る音楽ニュースであり、日本の音楽史に刻まれた歴史的な珍事件と言ってもいいでしょう。
 ことの発端は、週刊誌の記事に起因した作曲家の記者会見。ゴーストライターであることをカミングアウトした作曲家の発言は物議を呼び、一方、長い髪をばっさりと切り落とし、別人のようになった佐村河内氏が行った会見では、騒ぎがより大きくなってしまい、結果的にファンを裏切ることになってしまった感もありました。
 いったいいつまで続くのでしょうか…これが私の印象でした。当時、様々な意見がありましたし、マスコミの報道もやや迷走していたように思います。この騒動を理解するにあたって、私が最も共感した考え方は以下のようなものでした。
 音楽や芸術を聞いたり鑑賞したりするときに、聴き方や評価の仕方には大きく分けて2種類あります。一つは純粋に音楽だけを聴いて、楽曲の素晴らしさに感銘を受けること。これは、作品そのものを評価することです。もう一つは、音楽が生み出された経緯や背景、つまり、どんな人が、どのように作品を生み出したのか、そのストーリーに共感を覚え、評価が高くなることです。佐村河内氏の楽曲はテレビ番組で紹介されたことがきっかけとなり、大ヒットしました。難解な楽曲ではありましたが、作品が生み出されたストーリー、すなわち「全ろうの作曲家」とか「長髪、髭、サングラス」といった独特の風貌などが付け加えられることで、より分かりやすくお茶の間に浸透していきました。圧倒的に後者の評価をしている方が大多数だったと思います。だからこそ、そのストーリーがウソだと分かった瞬間、多くのファンが動揺し、ここまで騒ぎが大きくなったのだと思います。ファンの気持ちに答えるためにも、楽曲が生み出された過程を明らかにしなければならないでしょう。
 ここで、マスコミが今一歩踏み込めなかった楽曲の分析を改めて行ってみると、曲の完成度の高さに驚きます。印象的なメロディーと感動を呼ぶ展開はもちろんのこと、作曲をキチンと勉強した人でないと作れない複雑な技法を組み合わせたアレンジや、幾つもの音楽理論をつむぎ合わせて聞かせる構成力など、そのどれもが音楽的に美しく崇高な光を放っています。何度聞いても感動を呼び起こしてくれます。私は、作品そのものを評価します。楽曲が、多くの方に感動を与えてきたのも事実です。「子どもに罪はない」と言いますが、同じように楽曲自体に罪はなく、どんなストーリーに変わっても素晴らしい作品であることには変わりないと思っています。どうか、この曲が再び人々に受け入れられますように、一日も早い騒動の収束と真相の解明を祈っています。

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マサハラタニ
Gibsonブルースギターコンテストグランプリ受賞。数々の音楽ワークに携わった後、CM 音楽プロデューサー&タイアップ・コーディネーターを務める。現在大手レコード会社宣伝部所属。代表作は、資生堂、ミツカン酢、代々木ゼミナールCM、NHK星新一ショートショートなど。作編曲や歌手、ギターインストラクターとしても活躍中。
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