音楽コラム集

【コラム】リハスタでできるレコーディング講座 #2 バンド一発録り編「同じスタジオ内でバンドを一発で録る」

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 次回はギターのバッキングを複数のマイクで録音するケースを取り上げると前回告知したのですが、急きょ予定を変更します。
 サウンドスタジオノア野方店に新しいセルフレコーディングスタジオASstができました。そこで、そのスタジオで現在オルタナポップスタンダードを目指し活躍中のバンド「ジブンジカン」の一発録りをしたときのお話をさせていただきます。
 同じスタジオ内でバンドメンバー全員が “せーのッ!”で録音することを、一発録りと言います。個別に分かれたアイソレーションブースを使用してドラム、ベース、ギターをセパレートで録る場合は、他パートの被りもないので、マイクを極力近づけて(オンマイク)録り積極的な音色加工を行ったり、逆に離したり(オフマイク)など、自由にそのときの状況に合わせて変えていきます。しかし、今回は同じスタジオ内なので、どうしても被りは避けられません。ですから、たとえばギター録りでは、できる限りマイクをキャビネットに近づけて、ほかの楽器の音の回り込みを防ぎたいところですが、今回はオフ気味に20〜30cmくらい離して部屋で鳴っているアンプサウンドを狙うことにしました。マイクでの収音は、どのパートでもオンマイクで録音をするとマイクの近接効果で低音が増し太くエッジの効いたサウンドになります。同一の部屋でバンド演奏を行うと低音が回りやすいので、この近接効果を避けました。
 あと、せっかくの一発録りなので、そのグルーブを大切にするため、アンプからマイクを離して部屋で鳴っている音全体を狙ったという理由もあります。一体感のある一発録りの良さを生かし、その場で聞こえるリアルなバンドサウンドに近づけることを目標にしました。しかし、スピーカーとマイクの距離を離し過ぎると低音の少ない迫力に欠けるサウンドになるので、それを避けるために、ギタリストがギターの音決めで弾いている間に、良い具合のポイントを探すようにしました。マイクの指向性を考え、ギターアンプ収録用マイクへのドラムやベースの音の被り具合を確認しました。とくに、位相が悪くならないよう細心の注意を払いました。
 こういった一発録音でのサウンドメイキングのポイントは、アンプからの出音や部屋全体で鳴っている音の善し悪しを判断することです。このASstには、壁面に木材を組み合わせた拡散板があり、音を吸収しすぎず適度に響きを残してくれています。拡散板の近くにルームアンビエントマイク(スタジオ内の鳴りを狙ったマイク)を立ててみたら、とても良い効果が得られました。機材に頼らず、感性と耳だけを信じ、ひたすらマイキングによってより良い効果を生み出すことは、一発録りの醍醐味とも言えるでしょう。みなさんも、ぜひ試してみてください。成功を祈っています。

※この収録の模様はSOUND DESIGNER誌2013年4月号64ページに掲載されています。
写真:川合 泉  協力:月刊サウンド・デザイナー

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川嶋信博
NOBUHIRO KAWASHIMA
9月12日、仙台市に生まれる。中学生のとき、英語の授業でビリー・ジョエルを聴いて音楽に目覚める。2010年、エンジニアを目指し上京。レコーディングスタジオ「サウンドアーツ」に所属。シシドカフカ、FADE、LG MONKEES、PLASTIC TREE等様々なセッションに参加。リハーサルスタジオでのレコーディングなど、様々なシチュエーションで活躍している。現在、ピアノ弾き語りアルバム制作中。