音楽コラム集

【コラム】テレビ音響効果の世界 第3回「効果音を付けてみよう(その2)」

「効果音を付けてみよう(その2)」

 前回は朝の目覚めのシーンの効果音について考えてみました。最後のほうで触れた「耳線」、覚えていますか? 視聴者が聴いている音の空間を、別の空間にリードしていく効果音のテクニックです。
 この音のリードは、映像の「空間イメージ」を強調する際にもよく使われます。たとえば、シーンが鬱蒼としたジャングルから突然洞窟の中に変わったとします。前のカットのジャングルは鳥や虫、木々のざわめき、遠くで鳴く動物の声などで空間的な広がりを感じさせておいて、洞窟のカットに変わったときの一瞬の静寂、そして水滴の音。こういう音の演出で、空間の変化をドラマティックに表現するわけです。付ける音の種類で、空間をテレビの画面以上に広く感じさせたり、逆に画面の一点に集中させたりすることができるのです。
 たとえをもう一つ。こんな画をイメージしてください。森で、コナラの木がたくさん生えています。そのコナラの木の一本に、ウグイスが一羽とまっています。森のあちこちで鳴く鳥の声や木々のざわめきを付けると、画面に奥行き感が出てコナラの森の広がりを表現できます。逆に一羽のウグイスの鳴き声だけを付けると、見ている側はその一羽のウグイスに注目するようになります。「耳線」をどこに向けさせるかで、画面の見てほしいところに誘導するわけです。当然、「視線」の誘導として映像のズームインが考えられます、その際、映像の動きに対して、始めに木々のざわめきで空間的な広がりを表現し、徐々に一羽のウグイスの声にオーバーラップさせて行く方法も、映像を強調させる演出となるわけです。
 このほか、古典的な手法としては、カット変わりにインパクトのある音をぶつけることがよくあります。車のクラクションや電車のフォーン、ヘリコプターの飛行音などを付けてカット変わりの画を強調するわけです。
 このように視聴者の耳を誘導して、ビックリさせたり感動させたりしながら、その作品の中にグイグイひきこんでいくことが、効果音の大事な役割の一つと言えるでしょう。

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中島 克(なかじま まさる)
有限会社サウンド・デザイン・キュービック代表取締役。1985年、東京サウンドプロダクションを退社後、キュービックを設立。TSP在籍時には、テレビ朝日「川口探険隊」の選曲を担当。独立後は、「今夜は好奇心」 「驚き桃の木20世紀」などの番組も担当した。現在は「星新一のショートショート」「美の巨人」など楽曲制作も含め幅広く活動している。
[サウンド・デザイン・キュービック ]http://www.cubic-power.net
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