テレビ音響効果の世界

【インタビュー】中島克に聞く、テレビ音響効果の世界 第6回

「DAWになって失ったもの」

ー前回は、DAWの出現についてお話をうかがいました。その機械の進歩に、人間も追いついていかないといけないということが、大変じゃないでしょうか。

DAWの登場によって、それについていけない音効さんも出てきた。アナログからデジタルへの移行は今の若い人が思っている以上にドラスティックでした。僕の先輩にあたる音効さんも何人か業界を離れましたね。
今の若い音効さんは、逆にテープレコーダーなんて知らないわけです。たまに、昔の素材が6mmテープで届くことがあるわけです。それを持って来られると若い音効さんは、テープをかけることもできない。テレコ(テープレコーダー)を使いこなすのも結構技術が必要なわけで、ディレクターが後ろで見ていて、その前で作業をすることは一種のパフォーマンスだったんです。選曲さんがターンテーブルから音楽を出してケツ合わせでジャンと終わらせるのを見たときも、やっぱりみんな「お〜!」となります。ホントはドキドキしてたのに、うまくいったら涼しい顔したりしてね(笑)。
演出家は、音効が何を考えて音の構成をどのようにしようとしているのか、音楽はカットインなのかフェードインなのか、しぼるタイミングは、とかそんなことをチェックしながらテレコのパフォーマンスを楽しんでるとこがあったんです。中にはそのパフォーマンスが派手な人もいて、あるときカット変わりにポーンとテレコ叩いたら突き指した音効さんもいた(笑)。
6mmテープには、付ける順番に音を仕込んでいきます。音楽も事前に画の尺に合わせて編集しておく。例えばドアの開く音を入れて、足音もカット変わりにスタートするとうまくシンクロするように仕込んでおく。そんなテープを持ってスタジオに乗り込むわけです。だから仕込みが完璧だと、ポンポン順番に音を入れていくだけだから速い。それも見せ場の1つだったりしたわけです。
仕込みがしっかりしていれば、12時からお弁当を食べられるしミキサーからも喜ばれる(笑)。逆に仕込み方が甘いとやたらと時間がかかるし、ディレクターから本来文句が出ないところまで文句を言われるようになっちゃう、でお昼ご飯もおあずけ。

−ディレクターに「私たちが、こんなに努力しているということを理解してくれ」と思うときはないですか。

どういう音構成で組み立てているのか分かってほしいっていうのはありますね。ここに音楽を付けるから次のシーンはSEで頑張るとかね。
今回の震災で、各局がドキュメンタリーを作っていますが、こういう現在進行形の番組は音楽を付けるのも慎重にしなければいけなくて、わざと音を付けていないことがあるということを分かってほしいと思うわけです。でもデータを送ると単に手抜きのように思われてしまう。

−目の前で付けていないわけですからね。

そうなんです。DAWになって作業時間の短縮とコストパフォーマンスは手に入ったけど失ったものもあるということ。少なくともテレコで音を付けていた時代のほうが、はるかに演出家とのコミュニケーションは取れていましたね。まるでバンドをやっているような共同作業の醍醐味がありましたよ。

今回でインタビューは終了となります。次回からは、中島 克氏自らが執筆するコラムとなります。お楽しみに!

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中島 克(なかじま まさる)
有限会社サウンド・デザイン・キュービック代表取締役。1985年、東京サウンドプロダクションを退社後、キュービックを設立。TSP在籍時には、テレビ朝日「川口探険隊」の選曲を担当。独立後は、「今夜は好奇心」 「驚き桃の木20世紀」などの番組も担当した。現在は「星新一のショートショート」「美の巨人」など楽曲制作も含め幅広く活動している。
[サウンド・デザイン・キュービック ]http://www.cubic-power.net
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