テレビ音響効果の世界

【インタビュー】中島克に聞く、テレビ音響効果の世界 第5回

「不景気の時代でも、テレビがやれている理由」

ー前回、サンプラーの出現によって、音の作り方が大きく変わったというお話をうかがいました。ほかにも、変わるキッカケになったものはありますか?
サンプラーの次は、DAW、Pro Toolsの登場ですね。コンピュータを使った音付けは、今ではあたりまえの「コピペ」の発想をもたらしました。
最近のテレビを見ているとすごい数のタッチ音がテロップとかについている。一つひとつ付けてたらとんでもない時間がかかるけど、コピペのおかげで効率よく作業できる。音楽の編集だって、昔は6ミリテープを切り刻んでいたのが、これ違うなと思ったら「コマンドZ」でやり直せる。6ミリテープだとズタズタになってスプライシングテープで真っ白になってた(笑)。
テレビと映画の一番の違いは、時間なんですよ。映画は何ヵ月もあるいは何年もかけて作りますけど、テレビはロールごとに音をミックスして、そのまま放送局にもっていくみたいなことがあるわけですよね。オンエアで流れているものを見ているぶんには全然わからないけれども、裏ではロールごとに放送局に運び込まれてオンエアしていくんです。

−こっちで流している間に2本目やって。まるで生放送みたいな(笑)。
そんな感じでやっているから、DAWが出たというのは大きいですよね。

−スピーディーに作業するということが、現代では大事なことなんですね。
編集があがる、それが音効さんのところに届く。ナレーションも何も入っていないものを見て、どこに音楽やSEを付けるかなど全体の音の構成のレイアウトをする。それから、Pro Toolsに映像を取り込んで、映像に合わせて音を付けていく。付けたものを持って、別のスタジオに行って、そこでナレーションを録る。それに、同録といって、実際にカメラがまわったときのシンクロ音を整理・ミックスして仕上げる。
ちょっと前まで、Pro Toolsで仕込んだものを、ハードディスクにコピーして運んでたんですが、今はサーバーにアップすれば、スタジオでダウンロードできます。この不景気な時代、何でテレビがやれているかというと、DAWによる作業の効率化とコストパフォーマンスなんです。スタジオだって、昔はSSLやNEVEなど、宇宙船のコントロールルームみたいな巨大な設備だったのが、今では4畳半でしかも予算も10分の1でできてしまいます。
DAWの出現で音効さんの守備範囲が広がっているのは確かで、作業の過程としては、一度自分のスタジオでMAをやって、外のスタジオでもう一度MAをやる。音効さんは、自分のスタジオでミキサーの仕事もこなしていますよね。ただ忘れていけないのは、やっている作業の内容は変わらない。やっぱり見てもらう人に感動してもらう音を付けてなんぼなんですよ。

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中島 克(なかじま まさる)
有限会社サウンド・デザイン・キュービック代表取締役。1985年、東京サウンドプロダクションを退社後、キュービックを設立。TSP在籍時には、テレビ朝日「川口探険隊」の選曲を担当。独立後は、「今夜は好奇心」 「驚き桃の木20世紀」などの番組も担当した。現在は「星新一のショートショート」「美の巨人」など楽曲制作も含め幅広く活動している。
[サウンド・デザイン・キュービック ]http://www.cubic-power.net
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