編集部コラム

【インタビュー】田口 和典[ 田口造型・音響 ]

サウンドスタジオノアのオリジナルスピーカーが、ついに完成した。導入されたのは、サウンドスタジオノア渋谷1号店のE-2st。そのスピーカーを制作したのが、数々の音響空間を作り上げてきた田口造型・音響だ。今回、新木場にある工房にうかがって、田口和典氏のインタビューを敢行した。

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—スピーカーは、一つひとつ全部タグチさんのところで作っておられるのですか?
もちろん。ユニットは友達とみんなで立ち上げた会社で作っていますし、ここでは木を削り塗装してボディを作ったり企画や設計をしています。
—今、いろんなメーカーが海外で作っていますが、タグチさんのところでは全部、国産ということなんですね。
そうなんですよ。うちは、日本にこだわりたい。
—コスト的に海外で作ろうかなと考えたりはしないのですか?
うちのスピーカーは、お店にたくさん並べて売るようなものじゃないから、海外なんて考えたことないです。それぞれの空間に合うものを作っていきたい。お寺ですとか、ホールですとか、ずいぶんやりましたね。中でも教会が多かったけど、だんだんホテルとか商業スペースが増えてきましたね。最近、カフェがおもしろい。音をちゃんと生かしてくれる。
—タグチさんの特徴は、内装に合わせて特注で作っていただけることだと思いますが。
普通は、スピーカーというとプラスチックの白とか黒くらいしかないもんね。ゼネコンと一緒に仕事をしているとそういうことが多くて。この教会にはこの色じゃないとダメだとか、お寺の柱と同じ色とか言われて、800年経っている色と同じにしなくちゃいけないとか。「誰が作ったんだ」って聞いたら「豊臣秀吉だ」なんて言われたりして(笑)。
特注で作れるというだけじゃなく、みんなの顔が見えるような仕事がしたい。ものづくりというのは、みんなの力でやっているわけだから、それを大事にする会社にしたい。みんなが同じフィールドに立てる時代だから、どうやってつながっていくかだね。これからも新しいものを作っていかないといけないな、と思っています。
—今回、サウンドスタジオノアのスピーカーを作っていただいたわけですが、あそこまで大きな音が出るんだとビックリしました。
やっぱりミュージシャンがハイになってくれないと。
—リハーサルスタジオのスピーカーを作るにあたって、他とは違う特別な配慮をされていますか?
ライブ感が出て、ディテールがわかる音、ということに苦心しました。ただの爆音ではダメですから。
—普通の空間とは違うかなり吸音される空間ですが。
スタジオモニターではダメだなと思います。スタジオモニターというのは録音のためのスピーカーだけど、リハーサルスタジオはミュージシャンが楽しくならないとダメだから。特に前に出てくる音というのを大事にしてる。うちのコンセプトは、「みんなが踊りだしたくなるような音」だから。音のシャワーを浴びるようなものだから、スタジオ空間というのは。
—リハーサルスタジオでは、スピーカーからは主にボーカルとキーボードを出すことになることが多いと思うのですが、声に合わせてスピーカーを作られたんですか?
まず、声が前に出てこないとダメですよね。
—楽器の音とスピーカーの音を馴染ませる工夫はありますか?
たとえば、普通はスピーカーの中に吸音材をたくさん入れる。すると、電気特性を計ると結構フラットでいいんだけど、聴くとつまらない音が多いんだよね。だから、うちは吸音材をあまり使わないで、箱をうまく鳴らすように工夫している。スピーカーも楽器だと思っていますから。
今回のサウンドスタジオノアのスピーカーには、サインと日付を入れさせていただいたのですが、それだけの責任を持ってやらせてもらいました。
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田口 和典[ 田口造型・音響 ]
1981年に田口製作所を設立し、コンサート用・建築設備用スピーカーシステムの開発製造を始める。大〜小建築空間や野外施設等多数の納入実績があり、近年は独自の音響技術を確立。2006年からはON-COO(音響空間研究会)を主宰し、64ch-64スピーカーによるシンフォキャンバス音の森など気配や佇まいを大切にしたコンサートや特殊用途のスピーカーを開発し実用化している。また、ポータブルソーラーシステムによるPAの提案・実践、アーティストや研究機関への機材/技術援助など日々新しい音の表現を追求し、音による明るい社会の構築を目指している。