音楽コラム集

【コラム】ゆる〜いヒットの作り方 #9「みんなCM音楽を歌っていた --大森昭男ともうひとつのJ-POP--」/マサハラタニ

 これほどまでに多くのCM制作に関わり、CM音楽の世界に影響を与えてきた人は他にいないでしょう。Mr.CM音楽プロデューサー「大森昭男」。誰もが尊敬するCM音楽業界の大ベテランです。今回は、そんな大森さんの軌跡を追いながら、日本のCM音楽の歴史とJ-POPヒット作品との関係を明らかにしてくれる画期的な一冊をご紹介しましょう。

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 大森昭男さんは、70年代後半の資生堂の一連のタイアップ作品をはじめ、今日まで関わってきたCMは約2,400本。しかも大森さんが白羽の矢を立て依頼した作曲家たち(大瀧詠一、矢野顕子、山下達郎、鈴木慶一、坂本龍一などなど)は、当時は無名だったけれど、瞬く間に時の人となり、今や巨人となった人たちばかりです。その才能を見抜き、育てた功績はあまりにも大きい。もちろん今も現役のプロデューサー。本書の「サイダー’73」のくだりでは、大瀧詠一さんの初CM作品が生まれた瞬間が綴られています。私はこの制作秘話を読んだ後、楽曲を初めて耳にし、ざわめきともきらめきともつかない心の震えを感じました。あまりにもリリカルでしかもビビッドな印象に感動したのです。ちなみに私は1973年生まれ。
 最近は力が弱くなったと言われるCMですが、こうした大ベテランの功績を学ぶことで、現代においても挑戦できる方法がまだまだあるかもしれない、と考えさせられる一冊です。
 大森さんのプロデュース作品は、CD化もされています。実際の作品を聞きながら、この本を読んでいただくと、当時の空気感や時代背景を感じることができ、より楽しめることと思います。CM業界に関わらず、音楽業界を志すすべての人に、ぜひオススメしたい一冊です。

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マサハラタニ
Gibsonブルースギターコンテストグランプリ受賞。数々の音楽ワークに携わった後、CM 音楽プロデューサーに転身。代表作は任天堂DS、ミツカン酢など。作編曲や歌手、ギターインストラクターとしても活躍中。
http://jp.myspace.com/masaharatani