音楽コラム集

【コラム】映画と音楽 第9回「七人の侍」

バンドを組みたくなる映画に時代劇?と思われるフシもあるだろう。
それも当然だがしかし、
この映画では、農民が野武士軍団の略奪から村を守るために、
侍を雇い、様々な出会いから最強の七人を集める。
おわかりだろうか?
人集め=「メン募」の真髄が描かれているのだ!
映画では苦労して七人も集めるが、士農工商のない現代なら、四人は軽い!
レッツ・メン募!

☆「七人の侍」とは?
とはいえ、いきなり50年以上前の時代劇を引っ張り出してきて、
「観たことがあるか?」もない。
20代30代はおろか、平成生まれは観たことがないというのが実情だろう。

「七人の侍」は、
日本を代表する映画監督の一人である黒澤明がメガホンを取った一大活劇。
舞台は相次ぐ戦乱に疲弊した戦国時代末期。
国盗りの戦いのなかで、主をなくした武士たちは、
あるものは浪人となって新たな食いぶちを探し、
またあるものは野武士となって徒党を組み、
農村からの略奪を繰り返す群盗となっていた。
とある山間の農村に、野武士が密偵にやってきた。
まだ実っていない畑を見て、収穫期を狙って「また来るべぇ」と引き返す。
その予告はあっという間に村を駆け巡り、農民は諦めるより戦うことを選ぶ。
しかし、盗人に身を落としているとはいえ、
相手はかつて戦場を戦った猛者どもだ。
長老は言う。
「さむれぇ、雇うだ!」驚く農民たち。
しかし長老は、主のいない腹の減った侍に、米を差し出して頼めばいいという。

☆「侍雇用」
村の長老のビックリ発言に戸惑う農民。
しかし、彼は本気だ。メン募の始まりである。
町へ出た農民の若者、利吉(土屋嘉男)ら一行は、
当然、行く先々で断られる。
彼らには土下座と米(=バンドでいうなら打ち上げ代か)
しかないから如何ともしがたい。
そのうえ、農民は戦いの素人。鍬しか持ったことが無い。
チラシで例えるなら、
カラオケしか知らない高校生が貼り出した
「当方Vo、全パート募集、プロ志向」である。
気持ちはわかるんだけどねー。
実際、「打ち上げ代を持つからバンドに入ってくれ」という
お誘いはかなりの困りもんである。
結局、利吉ら一行はメン募に失敗し、内輪もめの大喧嘩をする。

そんな折、彼らの前に救世主が現れる。
ある日、初老の侍が、赤ん坊をさらった盗賊を、
僧に化けて鮮やかに救い出す事件が起きた。
その侍の名は勘兵衛(志村喬)。
事件を目撃した利吉は、木賃宿で彼に一杯の白飯を差し出す。
勘兵衛を慕う若侍、勝四郎(木村功)もついてきている。
しかし勘兵衛は、用心棒の依頼に「勝算がない」とだけ答える。
と、言いながらも「少なくとも七人・・・」と何か考えてる様子。
落ち込む農民。そこへ柄の悪い相部屋の客がからみだす。
「あきらめて死んじめぇ!そのほうが楽だぜ!」この言葉に勝四郎が怒る。
「お前に農民の苦しみがわかるか!」
「笑わすな!わかってねぇのはお前だ!
わかってんならたすけてやりゃいいじゃねぇか!」
この言葉が勘兵衛を動かした。
彼は白飯を手に取り、「おろそかには食わぬ」と頂戴するのだ。
酔っ払いの吐き捨てた言葉が、勘兵衛の侍としての矜持を刺激したのだ。
相手を否定する言葉で、プライドを刺激する。
かつて矢沢永吉は、
秋元康からドラマ「アリよさらば」出演のオファーを受けた。
一度は断ったものの、
秋元の発した「怖いんですか?」の一言で出演を決めたという。
押してだめなら引いてみろ、である。

ここから、勘兵衛に注目してみよう。
彼は言葉の端々から、並々ならぬ経験を積んできたことを伺わせる。
彼は、せっかく集めるのだから通じ合うサムシングを持つ男を、と考える。
しかも「自分を入れて少なくとも七人は必要」と言う。
さらには「用心棒になる(=一緒にバンドを組む)」ことのメリットはただ1点、
米(=飲み代)のみ。かなりリスキーだ。
しかし勘兵衛は、六人の男たちを集める。
その上、バンド・メンバー兼プロデューサーとしての視点はかなり正確で鋭い。
フランク・ザッパや内田裕也のように、
限られた条件で仕事にのってくる人物を的確に探し出す。
プロデューサー目線で人を集めろという、お手本である。

☆キャラ立ちしたメンバーを集めろ!
勘兵衛の侍センサーに引っかかって集まった男たちは6人。
彼らを有名ミュージシャンに例えて立ち位置を分析してみよう。

勘兵衛と偶然再会、仲間に加わる五郎兵衛(稲葉義男)。
彼は勘兵衛に並ぶ経験を持ち、兵法に詳しい。参謀役で出しゃばらない。
バンドサウンド作りに大いに貢献していながら、
ライブでは寡黙なベーシストとして振舞う、
レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズに近い。
もしくは初期YMOの坂本龍一だ。

七郎次(加東大介)は勘兵衛のかつての部下。
勘兵衛からは「古女房」と評され、あうんの呼吸もばっちりである。
乱暴な言い草だが、
これは「ジョン・レノンの舎弟」としてついてきてバンドに加入した、
ビートルズのジョージ・ハリソンのようなものだ。
ジョージのギターテクは正直、うまいかといえば微妙である。
しかし、ジョンとの呼吸はばっちりだ。

勘兵衛と五郎兵衛に「腕は中の下」と評されながらも、
仲間となるのが平八(千秋実)。
「苦しいときに重宝する」と、飄々とした人柄を気に入られての加入だ。
凄腕だらけだと、殺気立ってギスギスしてしまう。
「中の下」の癒し系メンバーが加わることで
バランスが保たれるのはよくある話だ。
平八はビートルズのリンゴ・スターだ(注:彼のドラムの腕は一流です)。
ビートルズがそうだったように、
こういう人間が本気で怒ったとき、バンドは最期を迎えることが多い。

そして凄腕の剣客、久蔵(宮口精二)。
彼は常に自らを鍛錬することに凝り固まった、
ストイックなバガボンドである。
ストイックといえばランディ・ローズ。
彼は売れないメタルバンドをやりながら、
ギター教師のバイトを続け、自己の鍛錬を怠らなかった。
練習用の小さいアンプで受けたオーディションに合格し、
オジー・オズボーンのバンドに加入。
初期オジー・サウンドの屋台骨となったのは皆の知るところ。
まさに久蔵そのものだ。
勘兵衛を慕い、「お前はまだ若い」とベンチ入りを一度拒否されるも、
持ち前の若さで皆を納得させる働きを見せる勝四郎。
ペーペーの若造。しかし、ペーペーだってやればできる!
バンドが好きすぎて、おっかけ回っているうちに、
正式メンバーにおさまってしまったセックス・ピストルズのシド・ヴィシャス。
メンバーも客も納得しない、強力にぺーぺーなベーシストでありながら、
彼はパンクの伝説となった。
まさにキング・オブ・ペーペー。
若さとやる気が大事というお手本だ。
ただ、勝四郎はシャブ中でヘロヘロになって恋人を刺したりはしないので
そこは間違いのないように。

最後の七人目、菊千代。
彼は農民の子という出自を隠し、大太刀をぶらさげたワイルドな小心者。
行動はエキセントリックで豪快、かつ屁タレ。
勘兵衛を一方的に気に入り、つけまわし、
俺も仲間に入れろと強要、
ぐでんぐでんに酔っ払った挙句にドッキリにひっかかり、
殴られて失神するという憎めない存在だ。
まさにこのタイプの典型がザ・フーの奇人ドラマー、キース・ムーンだ。
ザ・フーがまだ小さなクラブで演奏していた頃、
キースは彼らのライブがお気に入りだった。
ある夜、彼はいつものように泥酔、
「俺のほうがうまい」と前任のドラマーを挑発し続けた。
だったらやってみろとステージに上げられた彼は、
猛烈な勢いでドラムを叩き、その瞬間にザ・フーのドラマーとなった。
で、そのまま催してドラムセットにゲロをぶちまけた。
ロックしている。

こうして例えたメンバーが勢ぞろいしている
フランク・ザッパのバンドを想像してみて欲しい。
かなり強烈なロックバンドとして成立していないか!
(強烈過ぎて成立していない、というツッコミはこの際、抜きにしてください!)

☆「七人の侍」で真の漢(おとこ)を知れ!

映画に話しを戻すと、
彼ら6人は皆、「白飯が食える」という条件だけで仲間に加わる。
だが、よく考えてみて欲しい。
白飯だけで、「野武士の群れから村を守る」という、
過酷な条件を飲むやつがいるだろうか?
実際、利吉たちは「たかだか米で命を捨てろってか!」と
スカウトを拒否され続けた。
白飯だけで、命を投げ出すやつはいない。
七人の侍たちは、少ない人数で多勢の野武士と戦う、
生死を賭けるスリルに興奮を覚えているのである。

もし、自分の目指す音楽が、聴く者にスリルを与えられれば、
仲間は自ずと集まってくるだろう。
結局、最後は自分の出す音に全てがかかってくるのだ。
 
と、いうわけで、
七人が勢ぞろいするのが映画の大体3分の1くらいが終わった頃。
メン募の真髄が描かれるのはここまでだ。
しかし!物語のテンションがヒートアップするのはこの先である。
しかし、もう紙幅が尽きてしまった。
この先の、この映画の本当の面白さは読者自身の目で確かめてみてほしい。
七人の侍の戦う姿は、確実に、観るものの魂に火をつけるだろう。

【七人の侍は左卜全に注目!】
左卜全(ひだりぼくぜん:1894〜1971)
「七人の侍」にて気の小さい農民、与平を演じたのが左卜全。
日本の映画における農民の話し言葉、
「あらぁ、〜しただよ。」を確立させた一人と言って間違いない。
与平の台詞、「米がなきゃぁ、さむれぇ雇えねぇだよぉ。」、
「見てたにだよぉ。」を、筆者自身モノマネネタの鉄板として活用しているが、
細かすぎて伝わらないこと確実の至芸となっている。
もとい、左卜全と三船敏郎の軽妙な掛け合いと、
その後おとずれる悲劇は大きな見所だ。

【作品データ】
「七人の侍」(昭和29年 東宝映画)
監督:黒澤明 脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄 製作:本木荘二郎
出演:志村喬、加東大介、宮口精二、稲葉義男、千秋実、木村功、三船敏郎

(NOAHBOOK:高橋真吾)

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