テレビ音響効果の世界

【インタビュー】中島克に聞く、テレビ音響効果の世界 第2回

第2回 鉄腕アトムに見る、デジタル以前の音響効果

ー前回は、ゴジラとチャンバラを通して音響効果の歴史を教えていただきました。今回は、その続きをお願いします。

アナログの時代から次のステップというのは、やっぱり「鉄腕アトム」だと思うんです。それまでのアニメというのは、SEが付いていないんですよ。音楽とセリフだけ。音楽がないところは、何も音がない。アトムはSFの題材なのでSEを付け始めたのだと思うんですけど、1回目は足音が付いていないんですよ。

−アトムは足音が印象的なのに、1回目は付いてなかったんですか!

4、5回目から付き出すんです。試行錯誤をしているということなんですよ。あれを作ったのは大野松雄さんで、アトムのSEだけのCDも出ています。本当にSEだけのCDなんですよ。マニアは大喜びですね(笑)。
アトムのSEが何ですごいかというと、これもシンセサイザーをいっさい使っていないんですよ。

−シンセの音だとばかり思っていたのですが、使っていないんですか!

ないです。1963年からアトムの放送は始まりますから(注:ムーグシンセサイザーが発表されたのは1964年)。
大野さんの発想のもととなったのは、おそらく現代音楽のミュージック・コンクレートなんです。

−ミュージック・コンクレートって、何ですか?

1948年頃からフランスとドイツで始まるんですけど。フランスでは、ピエール・シェフェールとピエール・アンリという作曲家がいて、彼らは日常の生活音などの具体音を使って音楽を作ったんです。
たとえば、ドアの閉まる音とか歩く音とか車の音とかをテープレコーダーで録音して、そのテープを編集。逆回転させたり様々な方法でデフォルメして作った音楽。前衛的なので、音楽として聞くとたいへん疲れます(笑)。彼らがやったことで現実音をデフォルメするとこうなるという発想が出てきたわけですよね。
彼らも新しいことをやっているけれども、それを聴いて今の時代の流れの中に取り込んで消化していくクリエーターがいるわけですよ。大野さんというのは、そのうちの一人だったんですよ。
いかに大野さんがすごいか。それは、シンセとか、そういうものがない時代に、これだけの音を付けていること。その後、ムーグの登場、そしてデジタルの音の世界へと発展していきます。
日本の効果音の世界において、私はゴジラと七人の侍とアトムというのはエポックだと思いますね。

(次号に続く…)

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中島 克(なかじま まさる)
有限会社サウンド・デザイン・キュービック代表取締役。1985年、東京サウンドプロダクションを退社後、キュービックを設立。TSP在籍時には、テレビ朝日「川口探険隊」の選曲を担当。独立後は、「今夜は好奇心」 「驚き桃の木20世紀」などの番組も担当した。現在は「星新一のショートショート」「美の巨人」など楽曲制作も含め幅広く活動している。
サウンド・デザイン・キュービック http://www.cubic-power.net