音楽コラム集

【コラム】ゆる〜いヒットの作り方 #8「フィギュアスケートに聞く音楽の効果」/マサハラタニ

 先日開催された、バンクーバーオリンピックとトリノ世界選手権。フィギュアスケーターたちの熱演に、世界中の人がエールを送ったのは記憶に新しいですね。今回最も注目されたのは、やはり我らが浅田真央選手と韓国のキム・ヨナ選手の接戦でした。多くの人々を熱狂させたこの2人のプログラムを「選曲」という音楽効果の面から考えてみましょう。
 まず、キム選手の選んだショートでの楽曲は「007」メドレー。氷上のボンド・ガールと評され、チャーミングな魅力を振りまいていました。フリーではガーシュイン「ピアノ協奏曲ヘ長調」。きらめく氷を音で表現したかのような流麗なピアノのメロディーが美しく、ブルーの衣装ともよく合い、選手の魅力を最大限に引き出す演出効果が光っていたように思います。
 対する浅田選手がショートで使用したハチャトゥリアン「仮面舞踏会」は、流麗で情緒あふれる美しい旋律と軽快なワルツのリズムに乗った踊りやすい一曲。一方、フリーで使用された曲はラフマニノフの前奏曲「鐘」。赤と黒の衣装や表情など荘厳さが際立つ演出が施され、ほかのどの選手よりも偉才を放っていました。しかし、曲調は、重苦しい低音のフレーズから始まり、強弱はあってもメロディーの展開はほとんどなく、テンポは超スロー。重厚感は相当なものでしたが、果たして踊りやすかったのでしょうか…? 浅田選手に似合っていたのでしょうか…?
 これは推測でまったく架空の話ですが、もしバンクーバーで、キム選手が「鐘」で滑り、浅田選手がガーシュインの曲でトリプルアクセルをキメていたら結果はどうなっていたか…? なんて考えてみると、改めて選曲の影響の大きさを感じずにはいられません。ともあれ、2人の接戦には日本中が熱狂し、明るい希望と夢を与えてくれました。今後のますますの活躍に期待をしたいと思います。お疲れさまでした!

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マサハラタニ
Gibsonブルースギターコンテストグランプリ受賞。数々の音楽ワークに携わった後、CM 音楽プロデューサーに転身。代表作は任天堂DS、ミツカン酢など。作編曲や歌手、ギターインストラクターとしても活躍中。
http://jp.myspace.com/masaharatani