音楽コラム集

【コラム】 映画と音楽 第6回「ドキュメンタリー 頭脳警察」

「ドキュメンタリー 頭脳警察」
?君は頭脳警察を知っているか?
1960年代は若者の時代だった。
ベトナム戦争の激化に合わせて若者主導のカウンターカルチャーが爆発的な勢いで発展した時代だった。既成の権力や権威に対して異を唱え、「反戦」「平和」を合言葉にピース・サインを掲げた時代だった。そしてビートルズがいた時代だった。ビートルズだけじゃない。ボブ・ディランやローリング・ストーンズ、ジャニスやジミがいた時代だった。その時代は1969年で頂点に達し、新たな時代への種を蒔いて終わった。その種は日本の音楽シーンにも伝播し、多大な影響を及ぼした。1970年代に突入すると同時に歌謡曲としてのグループ・サウンズが終わりを迎え、フラワー・トラベリン・バンド、外道、はっぴいえんど、村八分といった本物の「ロック」を志向するバンドが続々と現れた。なかでも反体制・反権力というイメージを強く匂わせていたのが頭脳警察だ。その頭脳警察の軌跡を追うドキュメンタリー映画が完成した。
「日本語でオリジナルをやろう」と、頭脳警察は1969 年に結成される。中心メンバーは、1950年生まれのPANTA とTOSHI。バンドの名はマザーズ・オブ・インヴェンションの1曲、”Who are the brain police ?”から冠された。学生運動の時代、72 年に発表されたファースト及びセカンドアルバムは、その歌詞の過激さから発売禁止。頭脳警察は反体制のバンドとして担ぎあげられる。その後、成田の幻野祭をはじめ数々の伝説的なステージと6枚のアルバムを残し、学生運動の終焉と歩を合わせるかのように75年に解散する。「ドキュメンタリー 頭脳警察」は、PANTA が不知火を結成した2006 年から、頭脳警察を再始動させる08 年までの3年間を追う。ライヴを中心に250 時間妥協なくカメラを廻し、それぞれが独立した作品として鑑賞できる3部作として纏め上げられている。取り上げられた事象は様々。PANTA の母親の死から、その母がかつて看護師として乗り組んだ病院船・氷川丸から知る戦争の断面。東京拘置所に収監されている元日本赤軍・重信房子との往復書簡。それらをもとにした曲のレコーディング。そして重信との面会。また、14 歳の少年がひとりで200 人のアメリカ軍と戦ったという事実にインスパイアされた新曲の誕生。先鋭的であることを止めないPANTAは「止まっているということと、変わらないということは、違う」とカメラに語る。監督はかつてピンクの四天王と呼ばれ、昨今は一般劇場映画やテレビ・ドキュメンタリーの演出も手がける瀬々敬久。日本のロックの草創期から現在までを俯瞰する5時間20分、必見と言えるだろう。
【作品データ】
「ドキュメンタリー 頭脳警察」
(2009 年 / カラー / デジタル上映 / アメリカン・ビスタ / ステレオ)
監督:瀬々敬久
プロデューサー:石毛栄典
企画:須田諭一
撮影:西久保弘一ほか
製音:有元賢二
助成:文化芸術振興費補助金
製作・配給・:トランスフォーマー
出演:
PANTA(中村治雄) / TOSHI(石塚俊明)
中谷宏道(bass) / 菊池琢己(guitar) / 中山努(keyboards)
小柳”CHERRY”昌法(drums)ほか

11月、シアターN渋谷にてロードショー!